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(キンモクセイ開花情報サイトは↑)



金木犀おもしろ話題集

キンモクセイの開花情報や話題・・・ 魅力的な香りで人々を魅了するキンモクセイは、実はナゾが多い樹木。
わからないことだらけ。キンモクセイについて調べました。


担当者

サイトの目的

当初は、キンモクセイの花の香りに似た香水を作ることがテーマだった(今でもそうだが)。

毎年キンモクセイが開花すると、香りを堪能し、花のことを調べ、樹木の枝や幹を観察するうちにキンモクセイが好きになり、いろいろ知りたいと思うようになった。

そこで、キンモクセイについておもしろ話題を集めてみた。植物分類学者や植物学者ではないので、学術的に深い話は書けないが、楽しんでいただければ。

ふしぎなキンモクセイ

キンモクセイも他の植物同様、知れば知るほど、ナゾは深まるばかり。

たとえば、今でも日本のキンモクセイの由来はよくわからない。

日本のキンモクセイは中国から輸入された "たった 1本のキンモクセイ" のモノクローン個体群 (完全に同じ遺伝子をもつクローン植物)と考える人もいる。

しかし、日本のキンモクセイにもいくつかの品種があり、さらに品種も確定していない変種があったりする。

一方で日本由来のキンモクセイの存在を唱える人もいる(つまり、キンモクセイは伝来種ばかりではないと)・・・


(この記事の目次)

(1) 原産地

キンモクセイの原産国

中国南部(広東省、広西チワン族自治区、雲南省)と考えられている。

中国では、「丹桂」や「金桂」と呼ばれ、現在でも多くのキンモクセイが植林されたり自生している。

中国でのキンモクセイの種類と呼び方: 日本のキンモクセイは、一般に丹桂に相当すると言われているが、異論もある(確かに、色彩が違うと思う)






(2) 有名な場所

キンモクセイの里・桂林

桂林市は、中華人民共和国 広西チワン族 自治区(中国最大の少数民族の原住地)の北部に位置する街。ここはキンモクセイの街として有名。

英語表記は「Guilin」(グイリン)。

ある大手旅行代理店の桂林ツアーのパンフレットには「金木犀はここ桂林が原産で、地名の由来にもなっている」と明記されていた。

しかし、植物の原産地が都市単位で特定できるのかやや疑問。ただ、桂林は、それだけ金木犀の街としての知名度が高いということだろう。

桂林の「桂」は、日本ではカツラの意味にだが、中国ではモクセイを意味する(というか、桂をカツラの意味で使い始めた日本の方がミス使用となるだろうか)。

よって桂林は「キンモクセイ林」という意味だ。「桂花」はキンモクセイの花で、「桂花樹」(キンモクセイの木)という言葉も使用される。

この街が開かれたのは、秦の始皇帝が桂林群を設置したことからとされるので、歴史的にもかなり古い街。

桂林では、街全体にキンモクセイが植林されている。その数は40万本とも50万本とも。「桂花」が付く料理や「桂花」ホテル名なども多数あり、街全体にキンモクセイが溢れている。

桂林市内のキンモクセイの開花時期は、10月中旬が多いとのこと。そして、11月の上旬に2度目に開花というパターンがこの10年の傾向 (それ以前は不明、現地でキンモクセイの話を人に聞いたが、大半の人はキンモクセイへの関心は薄かった)。

キンモクセイは一般に大気汚染に弱い傾向にある。

桂林の交通量は、近年の激しい経済成長もあり、相当の量だが、車の排ガスが改善されていることとバイクがおおむね電動バイクに移行したことで大気汚染は以前よりは改善されつつある。

(2015年、個人的な観察からすれば、電動バイク対ガソリンバイクの比率は9対1程度)





(3) 果実

キンモクセイの実

キンモクセイは雌雄異株の植物だが、日本では雄株しか存在しないと考えられている。そのため結実せず実をつけることはないと一般に言われているが、どうもよくわからない。

また、日本のキンモクセイは、ワンクローン説が有力。江戸時代に中国から輸入されたわずか一つの株が日本中に拡散したという話です。

しかし、ウスギモクセイは、それ以前に存在していた(たとえば、樹齢1200年を越えると推定される静岡県の三嶋大社)と思われるし、こういうきわめて近種のキンモクセイが存在すれば、その突然変異とも考えられるかもしれない。

もし雄株だけなら中国から雌株を輸入されば実を付けてタネができることになるが、誰もやったことがないようだ (雌株を輸入しても、日本で栽培すると雄株に変質するという人もいる)

実は私自身が、雌株を輸入できないか調査しているが、まだ実現できていない。

ただし、ウスギモクセイに関しては実を付けるという話がインターネット内で散見される。

たとえば、東京都清瀬市のサイト:ウスギモクセイ

(ウスギモクセイの花は、両性花または雌花で、子房が発達して果実となるのだそうです。 なお、繁殖はいずれもつぎ木だけで行うようです。日本にあるキンモクセイ、ギンモクセイは、ほとんどが雄木で、ウスギモクセイは雌木だということです)





(4) 種類と仲間

金木犀の種類と仲間






(5) 開花

開花時期

中国・日本ともに9月下旬から10月に開花。しばしば「中秋の頃」(9月中旬)開花すると言われてきましたが、もっと遅い。

(中国の国土は広大なので、桂林と上海と北京では、咲くタイミングに相当の違いがあるだろう。あ、北京で先かどうか調べたことはない。上海は非常の多くのキンモクセイを目にすることができる)

南方に行くほど開花は遅れ、近年の中国・桂林では、10月中旬及び11月上旬に2度咲くと言われている。

同じ日本でも南に行くに従い開花は遅くなる傾向がある。数年前の観察では関東と九州では、満開の日程に約1ヶ月の違いがあった。年によってこの差は変動しているようだ。

この事実から開花前線は、サクラと反対に北から南に進むと言える。

早くなってきている開花時期?

毎年、キンモクセイの開花時期は気になる。関東では、おおむね9月下旬というのがこの5年間の傾向だが、以前は10月上旬が多かった。

私たちが観測をはじめた2006年頃、関東では10月上旬に開花する傾向があったが、ここ5年程度は9月下旬が多くなってきた。また二度咲きも近年の傾向。

2018年の開花時期は?

2018年の開花はいつ?

※ウスギモクセイは、キンモクセイより1-2週間程度早いようです。

ウスギモクセイの巨木で有名な静岡県・三嶋大社のウスギモクセイは、以前8月にも咲いていたようだが、近年は「9月上旬より中旬にかけ、黄金色の花を全枝につけ、再び9月下旬より10月上旬にかけて満開になる」とホームページに記述がある。





(6) 開花のキッカケ

開花を起こさせる要因

気温と日照時間らしい。 (よくわかりません)





(7) 芳香

芳香のナゾ

非常に強い、明快で特徴的な香りを漂わせる。しかも拡散性がよく遠くからも認識される。

多くの日本人がキンモクセイの香りで「秋の到来」を認識するほど、秋の花として知名度は高い。

中国でもキンモクセイの開花時期は、キンモクセイの公園は花見客でにぎわう。

一方、ヨーロッパでは植物園や趣味で植えているごく一部の人を除き、キンモクセイは認識されていない。

様々な花の香りを嗅ぎ記憶するトレーニングを受けているパフューマーでさえ、キンモクセイの香りを知らない人が多い。

ただし、近年、キンモクセイはヨーロッパでも人気があり、キンモクセイの香りを知るパフューマーも増加傾向に。

キンモクセイは、すばらしく感動的な香りで、中国・日本でこよなく愛される香りだが、ヨーロッパ人は必ずしも高く評価しない。

そのため、「アジア人に好まれる香り」という評価をされる場合がある。この香りは、身近にあれば世界中の人々にも愛されるだろう。

中国・日本でキンモクセイの香りが愛される理由には、文化的・歴史的・伝統的な背景も大きいだろう。

ところで、日本人でも一部の人には、キンモクセイの香りは苦手とする人も存在する。

その理由は確定していないが、おそらくキンモクセイの香りに特徴的なγ-デカラクトンという成分が影響していると推測される。

この成分は一部の昆虫に対して忌避行動を取らせる → (参照チョウ成虫の採餌行動と嗅覚情報物質)

一部の昆虫というより、比較的多くの昆虫がこの香りを嫌がるようだ。花の香りがおおむね昆虫を誘引する目的であることを考えると、かなりふしぎな現象。

(一方で、キンモクセイの葉は、開花時期、それなりに虫食い状態になっているものも多く、この樹が好きな昆虫がいる模様)

広島大学大学院生物圏科学研究科の大村先生は、上記参照文献の中で、下記のように述べられている:

「キンモクセイ花香の生態学的な意義は定かでないが、ある種の昆虫を花から遠ざけ送粉者を選抜していることが予想される。あるいは、この特異な花香に強く誘引される送粉者が原産地にはいるのかもしれない」





(8) 芳香成分

香りの成分

Wikipediaには「β-イオノン、リナロール、γ-デカラクトン、リナロールオキシド、cis-3-ヘキセノール」とある。

香りの先生として有名なローマン・カイザー(Roman_Kaiser)氏が行ったキンモクセイ・アブソリュート(キンモクセイの花の成分を溶剤抽出したもの)のガスマス分析によると、下記のような成分がリストアップされている。

(香り成分は数百種類存在すると思われるが、100種類程度が検出されている。そのごく一部抜粋:)





(9) 特徴

花の特徴

オレンジ色の小さな花が葉腋に密集して咲く。花弁は4枚(厚みがある)、雄しべが2本と中心部に不完全な雌しべ(痕跡的な柱頭)が観察される。

花の特徴

比較的固い葉。常緑。無毛。

枝の特徴

激しく枝分かれするので、剪定しないと髪の毛が多すぎる高校生の頭のようになる。

刈り込みには耐える方なので、剪定によって樹形を整えやすいそう。

(ただし、刈りすぎると花付きは、目立って弱くなる。元の元気なキンモクセイに回復するまでに数年を要する)





(10) トイレ

キンモクセイとトイレの関係

キンモクセイはトイレのニオイ?・・・キンモクセイはトイレとは、いっさい関係ございません。日本だけの話で、それも半世紀前までの話。キンモクセイに失礼だと思う。





(11) 分類

金木犀の分類

モクセイ科モクセイ属。

モクセイ科・・・モクセイ科は、双子葉植物に属する科。木本で、つる性のものもある。花弁は合着し4裂(一部5-8裂)する。花は芳香を放つもの(モクセイ、ジャスミン、ライラックなど)が多く園芸や香料に利用される。

モクセイ属・・・雌雄異株。葉は対生し、単葉で革質、縁は鋸歯があるか全縁になり、葉柄がある。花は小型で葉腋に束生または短い総状花序につき、秋に開花し香気があるものが多い。

花冠は4裂し、短い筒部をもつ。雄蘂は2個まれに4個。子房は上位で2室。果実は楕円形の核果となり、果皮は厚く、ふつう種子は1個。





(12) 楽しむ

キンモクセイの楽しみ方

日本では、観賞用庭木や公園樹として非常に人気がある。香りが好まれる。

中国では、生花の香りも好まれるが、お茶やお酒のフレーバーとして人気がある。たとえば桂花茶や桂花陳酒。

中国にはキンモクセイで香りをつけた桂花茶・桂花酒などはポピュラーだが、日本ではなじみが薄く、キンモクセイの食品香料としての利用は少ない。





(13) 由来

金木犀、名前の由来

「キンモクセイ(オスマンサス)」のモクセイは「木犀」。木の犀(サイ)と書く。

樹皮が、動物のサイのようにゴワゴワしているからという説が一般的。キンモクセイ程度のゴワゴワした樹皮の木はほかにも多い気がするが、どうなんでしょうか。


※確かにサイの皮に似ているような・・・





(14) 香料産地

キンモクセイ香料の産地

中国広東省や広西省では、キンモクセイの開花時期に花を摘み取り香料(オスマンサスアブソリュート)を生産する会社さんが存在する。オスマンサスアブソリュートは香水やフレグランスの原料となる。

オスマンサス・アブソリュートの生産は非常に珍しく、世界に数社程度ではないかと思われる。中国以外の他国では、おそらくオスマンサス・アブソリュートは、少なくとも産業ベースでは生産されていないだろう。





(15) 伝来のナゾ

中国からの伝来の時期

キンモクセイは、一般に中国から伝来したとされている。

伝来の時期は、インターネットでは「江戸時代」という記述が多く見つかるが、私の知る範囲では出典は不明。

静岡県三嶋神社のキンモクセイは、樹齢1200年と言われるので、江戸時代説は覆りそう。しかし、こちはら正確にはウスギモクセイ。ウスギモクセイは、では、どこから来たのか? それは不明。日本原産説もある。

日本のキンモクセイは、ウスギモクセイが日本国内で変異した新種という説もある。

ウスギモクセイは日本原産説もあるので、もともとキンモクセイは日本固有の樹木かもしれないということで、全然わかりません。

やなり、最終的にはDNA鑑定で調べるしかないんでしょうね。





(16) 日本で愛される

「都道府県の木」としてのキンモクセイ

キンモクセイを「都道府県の木」に指定している自治体は下記の通り: (Wikipedia参照)

おお、こんなに!キンモクセイは本当に日本人に愛されているんですね。





(17) 変種

キンモクセイは雌雄異株

花には通常、雄しべと雌しべがある。このような花は両性花と呼ばれます。

しかし、雄しべだけか、雌しべだけの花を咲かせるものある。それぞれの花が同じ株に咲く花(雌雄異花)もあれば、雄雌(オスメス)が別個体になっている動物のように違う株に咲く花(雌雄異株)もある。



ウスギモクセイとキンモクセイ

ウスギモクセイは、一般にギンモクセイの変種とされてきたが、現在では別品種という説が優勢だとか。

ウスギモクセイとキンモクセイの違いは、花の色の他、葉の大きさ・形状、鋸歯(きょし)の有無などがある。

キンモクセイの花は橙黄色、ギンモクセイは白、ウスギモクセイは淡黄色。キンモクセイには鋸歯がないなどの特徴がある。





(18) 大気汚染

キンモクセイと大気汚染

キンモクセイは、硫黄酸化物(SOx)や二酸化硫黄(SO2)などによる大気汚染に比較的弱いことが知られている。

よって、トラックや自動車が激しく道路脇などでは成長が遅かったり花が付きにくいなどの現象が見られます。

1970年代、日本の高度成長期では大気汚染が深刻となりましたが、東京や大阪などの大都市では、花を付けないキンモクセイが話題になったそうだ。

実際、生育状況も悪く、やがて大都市からキンモクセイが消えるのではないかと心配された時代があったんですね。

今では日本中を埋め尽くす勢いのキンモクセイだが、これも日本の大気汚染がかなり改善されたことを意味するのでしょうか?

石油には硫黄酸化物が微量含まれているが、精製技術が未熟だった30年くらい前まで自動車の排出ガスには微量に含まれていた。

しかし、現在はかなり改善されている(現在は、むしろ給油時に飛散しやすいPM2.5が問題)





(19) クローン

すべて挿し木による繁殖(クローン)?

日本のキンモクセイは、雌株がなく結実しないため、言い伝えられるとおり中国から伝来したものとすると、それが挿し木だけによって日本中に拡散したことになる。

もし仮に中国からもたらされたキンモクセイが1株なら、日本のキンモクセイは、なんとワンクローンの樹木と言うことになる。

しかし、それはキンモクセイが中国よりもたらされたことで、しかも1株という条件がつくので、そうでない可能性もあるだろう。よくわからない。しかし、かなり大多数の樹木がクローンであることは間違いない。





(20) デカラクトン

香り成分γ-デカラクトン

キンモクセイの特徴的な香り成分が、γ-デカラクトンと言われている。

しかし、これは他のモモやスモモ、アプリコットなどの果実や牛肉(特に和牛)に含まれる成分で、これだけではキンモクセイの特徴にはならないが、これが他の成分と混じることでキンモクセイ特有の香りになる。

ところで、キンモクセイの香りは拡散性がよく遠くからも認識されやすいのだが、γ-デカラクトン自身は、準揮発性有機化合物(半揮発性有機化合物=Semi Volatile Organic Compounds (SVOC))。遠くまで飛ぶにはやや重いと考えられる。

遠くまで拡散する香り成分は、β-イオノンを中心とした成分ではないかと考えられるが、β-イオノンは、どちらかといえばスミレの花に含まれる香りなので、実際何が飛んできているのか、よくわからない。





(21) プラン

中国では結実するのか?

日本では雌株が雄株に変化?

インターネットでこういう記事を見つけた:「金木犀は 中国では結実するそうです。雌木を日本に持ち帰り栽培しても、雄木に変わってしまうそうです。原因はわからないらしく」(http://gakisroom.exblog.jp/10349159)

日本にキンモクセイの雌株が入ってきていない理由は、花付きがよい雄株だけが輸入されたとなっているが、この長い年月、誰かがキンモクセイの雌株を日本に持ち込んだということは当然ありそうに思うのだが、もし持ち込んでも雌株が雄株に変化してしまえば、どうにもなりません。





(22) 香り

香りは、ひたすら甘く切ない

キンモクセイの香りを愛でる習慣は、中国と日本で顕著であり、ヨーロッパ人にこのような思い入れはないようだ。そもそもヨーロッパのパフューマーはキンモクセイの香りをよいと評価する人が少ない気がする。

キンモクセイの生花に近い香りを作ってと依頼すると「どうしてあんな香り好き何か理解できない」と感じるパフューマーさんも多い。

それをいえば、ユリも「どうしてあんな香り好きなの?」と言われたことがある。





(23) 開花前線

キンモクセイ開花前線

開花前線はサクラの反対で南下

キンモクセイの開花前線は、東北・関東からゆっくり九州に向かって1ヶ月くらいのタイムラグで移動する。そのことからキンモクセイの開花には日照時間と気温が影響を及ぼしている可能性が高いと予想している。

特に猛暑の年は、キンモクセイの開花が遅れたり、花付きが悪いなど気温の影響は体験的によく知られている。

中国でも遅くなる傾向

キンモクセイで有名な中国・桂林でもキンモクセイは、「中秋」(9月中旬)の頃咲くと言われていたが、近年では10月に咲くようになってきているとのこと。





(24) 二度咲き

2度咲きの怪現象

以前から園芸家の間で「2度咲くキンモクセイ」が話題になっていたが、最近では珍しくなくなりつつある。

キンモクセイの2度咲きは、地球温暖化との関係が指摘されており、温暖化が進めば2度咲きするキンモクセイが増加すると予測される。しかし、そのメカニズムはわからない。






(25) 名所

キンモクセイの名所

静岡県・三嶋大社・ウスギモクセイ

群馬県・華蔵寺(けぞうじ)・キンモクセイ

群馬県・永明寺(えいめいじ)・キンモクセイ

群馬県・祖母島(うばしま)・キンモクセイ

広島県・正福寺

王至森寺(おしもりじ)・キンモクセイ

熊本県・麻生原(あそうばる)・ウスギモクセイ

宮崎県・願成就寺・ウスギモクセイ






(26) 桂林取材

金木犀の街・桂林

中国南部の都市・桂林(けいリン)へ行ってきました。この街には金木犀の香料を生産している会社さんがある。

この会社さんとの今後のお取引を含めたミーティングを行うために訪問させていただきました。

桂林とは?

桂林という街をご存じですか?桂林市の人口は市街地で80万人。日本で言えば熊本市や静岡市と同じ人口規模で、中国内では風光明媚な地方都市というイメージの街です。

秦の始皇帝によって桂林郡が設置され以来、歴史にもたびたび登場する古い街です。

桂林は、カルスト地形が有名で、雲南や重慶などのカルストとともに「中国南方カルスト」としてユネスコ世界遺産に登録されている。日本ではカルストのイメージは鍾乳洞だが、桂林のカルストは険しく切り立つ岩山、タワーカルストが特徴です。

私もはじめて見るタワーカルストには驚かされました。ロッククライマーが見れば心躍りそうな険しさでした。

桂林の有名な観光はなんといっても「漓江下り」。

市内を流れる漓江(りこう)という川をタワーカルストが林立する谷間を遊覧船で下っていくと、もうそこは山水画の世界とのこと。残念ながら私たちにはその時間はありませんでした。

「漓江クルーズは今回できないんですよ」と言うと先方さんも「え、そうなの?」と言った感じです。桂林に来たら「漓江下り」は必須アイテムのようです。

桂林の金木犀

私たちの目的はもちろん金木犀。

桂林の「桂」は、日本ではカツラの樹を意味しますが、中国ではモクセイを意味します。つまり桂林は「金木犀の林」を意味します。桂林の市樹は「桂花樹」、市花は「桂花」。金木犀オンパレードですね。

街中は、もちろん金木犀だらけでした。40万本とも50万本とも言われている。

私たちが訪問したのは2015年9月中旬。金木犀の樹木には微かな萌芽が出ていたが、開花までにはまだ1ヶ月はかかりそうな気配でした。

ただし、市内の樹木全部が金木犀というわけでなく、クヌギやクスノキなども多く、ヤシの木も散見されました。

植生は全体的にやや亜熱帯の雰囲気です。市内中心部はバイク・車が縦横無尽に走り回り、唐辛子などの香辛料を多用した料理とザワザワ感が東南アジアを彷彿させる賑わいでした。

現地の方によると、金木犀は毎年10月中旬頃に咲くそうです。ただ、こちらも近年の異常気象のせいか開花時期の揺れが大きくなってきている模様です。

桂林有限公司

今回訪問させていただいた会社さんは「桂林有限公司」。

桂林香料さんのメインプロダクトは、金木犀のアブソリュート。

アブソリュートとは天然香料の一種です。香料は花や植物から採取しますが、採取方法によって大きく精油(エッセンシャルオイル)とアブソリュートに分かれます。

植物を水蒸気で蒸留して採取する香料が精油。これに対してアブソリュートはソルベント(溶剤)を使用して採取します。

アロマテラピーではより天然にこだわるため精油を利用しますが、高温の水蒸気で香り成分が変質しやすい欠点がある。

香水業界では、どちらかといえばアブソリュートが伝統的に多く利用されてきました。

そもそも水蒸気蒸留では、金木犀の精油は実用レベルでの採取が不可能と推測される。

そこで金木犀の天然香料といえば必然的に金木犀アブソリュートとなるわけだが、金木犀の天然香料を生産している会社さんは、おそらく世界に数社。

桂林香料さんはその大手です。

香り成分以外、様々な成分(たとえば、ワックスなど)が含まれる物質で、天然香料としては半製品です。エタノールなどで香り成分のみをコンクリートから抽出したものがアブソリュートとなる。

金木犀は、観賞用としてヨーロッパや北米でも多少見かけますが、圧倒的に中国・日本に多く、金木犀の畑となると、もうこれは世界的に桂林周辺を含む中国南部に集中すると考えられます。

「金木犀の畑」とは花を採取するための畑です。中国では金木犀の花は、伝統的にそのまま乾燥してお茶やお酒の香り付け用フレーバーとして利用されるし、一部漢方薬にも利用されているようだ。

桂花から香料(アブソリュート)を生産し世界に輸出している会社さんが桂林香料さんです。

中国の金木犀

中国では、金木犀の花は「桂花」と呼ばれます。「金木犀の花」と表現する日本と比較すると専用の用語があるわけで、それだけ生活のと関連度が深いのかもしれない。

中国の金木犀の種類を質問してみた: いろいろあるね。もちろん、植物学の分類上は、まだまだあるはずだが、一般的に流通している金木犀の種類は上記4種類。

この中で桂林香料さんが使用する金木犀は「Golden」(金桂)。香りが最も強いとのこと。

日本にも金木犀や銀木犀などの種類があるが、どれがどれに相当するかわかりますか?

日本の金木犀 = 金桂(きんけい)?

と推測された方が多いのではないでしょうか? 実は、丹桂(たんけい)が日本の金木犀に相当するという説が一般的。

金桂は花の色彩からすれば日本の薄黄木犀に近いと思われる。ただ金木犀は色彩の点で丹桂に似ているが、香りの点で金桂に近いので「金木犀 = 丹桂」説には異論も多そうです。

私の想像では日本には金桂が輸入され、現地化の過程で変異を起こし現在の金木犀になったかも?・・・と考えている。

ただ、金木犀はそもそも日本原産という説もあってよくわからない状況です。将来のDNAによる検証を待つしかありません。

ところで、上記4種の金木犀のうち日本では珍しいと思われる品種が「四季桂」です。

文字通り四季咲きの金木犀で、桂林香料さん会社内に植林されていたので拝見しましたが、花付きが悪く香りも弱く香料としては利用しないとのことでした。





(27) 開花情報の投稿

開花情報をお寄せ下さい

みなさまのご近所の開花情報をお寄せ下さい。こちらの「開花情報」サイトにて公開させていただきます。

開花情報募集









(キンモクセイ開花情報サイトは↑)


kinmokusei2015
(オードパルファン「金木犀2015」は↑)




(28) 運営者

担当者
はじめまして、武蔵野ワークスの国分です。弊社は日本の香水メーカーです。キンモクセイやジンチョウゲ、ウメ、モモ、サクラなどの香水を制作しています。商品開発と販売営業を担当。

パフューマーではありません。鼻は効かない方なので、私の香りウンチクは、半分くらい差し引いて聞いてほしい。しかし、事実関係については、ある程度、裏を取って書いているので、ネットにあふれるフェイクや他人の記事の丸ごとコピーより信用できるのではないかと思います。